I'm still alive.

まだ生きています。

ああ、眠りたいなぁ

あまりに嫌なことが起こると、とにかく眠りたくなる。

2021/01/21金曜日だった。好きだった人がネットワークビジネスのやっていることがわかった。自分に親切にラインの返信をしてくれていたのも、結局は勧誘が目当てだったのね。どうやら、好意をうまく利用されていたようだ。こんなことがあると自分は情けない気持ちになる。その人は、品の良さそうな人だった。すごい育ちが良さそうな感じ。ややたれ目、弧を描いた眉、色白で、少し顎がとがっている。口調が他の人と違ったので、自分は魅了されてしまったのだった。そう、自分がこの人と出会ったのは、ペアーズだ。ペアーズで会う人がみんなこういうわけではないが、しかし、今回は本当にがっかりしてしまった。

何ががっかりしたかって、この人が職業を偽っていたことだ。外資系企業でコンサルタントをやっていると言っていたのだが、それが嘘だったのだ。この人はネットワークビジネスにのめりこんだ一人の人間に過ぎなかった。今でも、記憶の中では、真っ黒のチューリップ帽の下に、この人の亡霊のような白さの顔が浮かんでいる。「あなたは本当に優しい人ですね」といつかこの人は言った。そう言われてその時は嬉しかった。だけど、あなたは自分のようなやわな人間をカモにしていただけだったのですね。

異性に対する愛情を利用された情けなさで、自分はがっくりきた。それで、土日はひたすらに寝込んでいた。こういう、嫌なことが起きたとき、自分は頭の中がガーンと殴られたような感覚に陥る。そして、この嫌な現実から逃げたくて、眠るという行動を取る。本当に惨めな姿なんだろうな。万年床となった布団。お風呂にも入らず、悪夢にうなされながら、汗をびっしょり書いたユニクロのスウェットを着たまま、寝続ける。ふと起きると夕方の16:00くらい、何かをするには遅い時間で、そのまま寝続ける。隣の部屋の住人のくしゃみ。窓の外の雨の音。情けない気持ちが、頭の中いっぱいに広がる。

さすがに寝すぎて、むくりと起きる。のどがカラカラなので、水を飲む。コロナだし、何より外に出かける気力もないのでずっと家にいる。映画。サトウのご飯をレンチンして、卵とウインナーを炒める。もう30代なのにね、こんな生活。深夜にPCのモニターでPrimeVideoをだらだらと見る日々。誰が来るわけでもない、友達と遊びにいくわけでもない。ワンルームの真っ白で淡泊な蛍光灯の光が煌々と照らすのは、世界から切り離された独身者の生活である。皆が寝静まっているときに、一人だけ煌々とした明かりが照っている部屋。黒ラベルの空き缶。投げ捨てられたティッシュと下着。そして映画に没入している自分。エドワード・ホッパーかよ。

「帰りたいなぁ」と自分がふと心の中でつぶやく。

「おい、何を言っているんだよ。ここ、君の家だぜ」と自分は反論する。

「(・・・だけど、自分が帰るべき場所って、ここなのか?)」

「わからない。わからないよ。はあ、もう疲れた。もう寝よう。考えたって意味もないんだから。今日はもう、おやすみ」

完全に気を失って、この世界を忘れることで、君はやっと安心感を覚えるのだ。